ミレニアム・ブリッジ


2000年6月にイギリスだけでなく世界的にも著名な建築家のノーマン・フォスターがコンペで優勝した作品である「ミレニアムブリッジ」がオープンされました。しかし、実際にオープンして多くの人が通行してみると、激しい横揺れが起こって僅か3日で閉鎖される事になりました。
 
閉鎖されてから2週間を経た6月中旬頃に東大の藤野陽三教授にArupという世界有数の設計コンサルタントの技術開発部長のマイクさんという電話が入りました。横揺れの専門家である藤野陽三先生の論文(1990年の日本の事例を1993年にイギリスの論文で紹介)を見て、1999年に開通したパリの歩道橋でもアドバイザーをした藤野先生の意見を聞きたいという事でした。7月に1度様子を見るために訪問して、現地の担当者と意見を交わします。
 
それから9月には、日本の石川島播磨重工(IHI)のエンジニアの方と2人で再びロンドンに入っています。先生の言葉は印象的で「テクニカルな議論の場では,ポスト上での上下は全く関係なく,若い人も年上の人も対等に議論していたことでした.若い人が伸び伸びとしているとの印象も持ちました」という事です。日本ではこのような議論は出来るでしょうか?
 
この橋が再開されたのは、ミレミアムがとっくに過ぎ去った2002年2月22日になってからの事でした。横揺れに関しては、相当に抑えられたようですが、現在でも多くの人が橋を横切った場合には、歩けないほどではないにせよ激しい揺れを感じます。
 
全長は320メートルと長いのに対して、上部などから支える形を取らずに2つのY字型の橋げたによって支えられています。これはフォスターが描いたこの橋へのコンセプト「優雅な剣・光の翼」を表していて、景観としては悪くないのですが、設計段階に厳格な日本だったら当初から採用されなかったでしょう。こうして1894年のロンドンブリッジ以来、実に1世紀ぶりにテムズ川に新しくかけられた端は、10年を経た今ではすっかりロンドンの観光名所として定着しました。
ミレニアム・ブリッジ

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